国立大学法人の教員は基本的に裁量労働です。裁量労働というのは,実際に職場にいた時間にかかわらず,あらかじめ決められた時間だけ毎週働いているとみなす,という制度です。デザイナーやコピーライター等,高い創造性が求められ,勤務時間管理はなじまないけれど会社から給与を受け取っている,といった職種が当初は想定されていましたが,現在では大学の教授研究業務も適用職種に入っています。国立大学が法人化される以前,国立大学の教員が全員公務員だった頃にも残業に伴う超過勤務手当はつかず,その代り就業時間内の副業も認められていたのですが,法人化に伴って公務員ではなくなり,裁量労働制に移行し,勤務時間管理の束縛から晴れて公式に自由になったのです。従って,講義や重要な学内会議をさぼったりしない限りは,朝何時に職場へ行っても構いませんし,特段の用事がない日は自宅勤務でも誰にも文句は言われません。
そんな勤務時間の管理だと,誰も真面目に仕事をしないのではないか,と思われるかもしれませんが,みんな学術研究で一旗揚げたくて東大教授になったのです。教育研究をするな,と仮に組織上の上司から言われたとしても,こっそり隠れて教育研究に励むような人しか結果として採用されていないはずなのです。もちろん,教育研究で頑張り続けようとする気力が挫けてしまうことも時としてあります。それでも,高いプライドが維持されている間は馬鹿にされないように頑張るのです。
沖 大幹 (2014). 東大教授 新潮社 pp.36-37
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