さて,勉強と研究とは何が違うのでしょうか。
先人達によって考案され,十分吟味しつくされた定説を体系立てて学ぶのが勉強です。真面目に勉強していると,あたかも世の基本原理はすべてわかってしまっていて,後はその応用に過ぎない,などと早合点してしまう聡明な生徒さんもたくさんいるでしょう。しかし,そうではなくて,わかっている知識をわかるように教えるのが教育なのです。
これに対し,研究では,答えがあるかどうかわからない課題に取り組むことになります。やれば答えが出るとわかっている課題の解決は作業であって研究ではありません。
そもそも,とくべき課題が何であるかをまず見定める必要があり,たいていの場合,課題を決める時点で研究成果が面白いかどうかの大半が決まります。さらに自分自身の能力や研究環境の限界などを考慮しつつ,大きな課題を取り扱いやすく解けそうな小問題に分解し,ひとつひとつ段階を踏んで取り組んでいくのが研究の真髄です。
沖 大幹 (2014). 東大教授 新潮社 pp.59-60
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