ロジャーズの功績で目を瞠るのは,その著『Counseling and Psychotherapy』で,医師とカウンセラー,患者と相談者を区別することなく,「セラピスト」「クライエント」と呼んだことである(『カール・ロジャーズ入門 自分が“自分”になるということ』)。とくに,「クライエント」というネーミングは画期的だった。職業相談や教育相談で行われるカウンセリングは,ロジャーズに出会う前の友田不二男が母親の面接で行っていたように,相談に対してアドバイスや指示を与えることが中心であり,それでは自分で解決する力を奪うことになりかねない。人は本来,自分の問題は自分で解決する力をもっているのだから,相談者が主体であるべきだと考え,自発的に依頼した相談者という意味で,「クライエント」という言葉を使用したのである。