その評価を行ったのがバウマイスターで,彼は1994年に出版された学術書『自制心の喪失』(彼の妻でケース・ウエスタン・リザーブ大学のフェロー教授ダイアン・タイス,ハーバード大学の教授トッド・ヘザートンとの共著)で,それを発表した。この本では「自己調節の失敗こそが,現代における主要な社会病理である」と結論づけられ,それが高い離婚率や家庭内暴力や犯罪,その他の問題の一因となった多くの例が挙げられている。この本に刺激されてさらに実験や研究が行われ,性格検査における自己コントロール能力測定のための尺度も考案された。研究者らが大学生の成績と,30を超える性格特性項目とを比較したところ,各学生の成績評価点の平均値を,偶然よりも高い確率で予測できる特性は,自己コントロール能力だけだとわかった。自己コントロール能力は学生の成績を予測する方法として,IQやSATのスコアより優れていることも証明された。いわゆる生の知性(ローインテリジェンス;問題解決能力や明晰な思考など)も明らかにプラスになるが,自己コントロールはそれよりも重要だった。自分をコントロールできる生徒は授業への出席率も高く,早めに宿題に着手し,よく勉強する一方で,テレビを見る時間は短かった。
ロイ・バウマイスター&ジョン・ティアニー 渡会圭子(訳) (2013). WILLPOWER 意志力の科学 インターシフト pp.21-22
(Baumeister, R. F., & Tierney, J. (2011). Willpower: Rediscovering the Greatest Human Strength. London: Penguin Books.)
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