だが現在では,バウマイスターらが新たに行った実験のおかげで,人は自我が消耗したときにあるサインを出すことがわかっている。バウマイスターが長年の共同研究者であるミネソタ大学の心理学者キャサリン・ヴォス率いる研究チームとともに行ったその実験では,被験者を(またしても)自我消耗の状態にしたところ,感情にはっきりした変化は現れなかったが,すべてのことに対する反応が強くなったというのだ。自我が消耗した人は,そうでない人に比べて,悲しい映画を見るとより悲しく感じ,楽しい絵を見るとより楽しい気持ちになり,物騒な絵を見るとより恐怖を感じて動揺し,冷たい氷水をより苦痛に感じたという。感情だけでなく欲望も強く感じるようになり,クッキーを1つ食べたあとに,もう1つどうしても食べたくなり,可能なら実際に追加のクッキーを食べた。またラッピングされた箱を見ると,開けてみたいという特に強い欲求を感じたという。
ロイ・バウマイスター&ジョン・ティアニー 渡会圭子(訳) (2013). WILLPOWER 意志力の科学 インターシフト pp.44
(Baumeister, R. F., & Tierney, J. (2011). Willpower: Rediscovering the Greatest Human Strength. London: Penguin Books.)
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