意志力を使用することがらは,大きく分けて4つのカテゴリーに分類できる。1つは思考のコントロールだ。思考をコントロールしようとしてもうまくいかないことがある。たとえば何か深刻なことを無視したいとか(「消えてしまえ!忌まわしい染み!」),頭の中でぐるぐる回る歌詞のフレーズを追い払いたいとか(「アイ・ガッチュー・ベイブ,アイ・ガッチュー・ベイブ」)。それでも後でお話しするように,集中する方法を身につけることはできる。強い動機がある場合にはなおさらだ。
そもそも人は完璧な答えや最善の方法を探すかわりに,あらかじめ決められた答えで間に合わせて意志力を温存することが多い。神学者やキリスト教信者の場合は,信仰上の譲れない主義を貫くために余計なものを視野に入れないで生きる。売り上げナンバーワンのセールスマンの多くは,一番先に自分をだますことで成功してきた。サブプライムローン担当の銀行員は,信用度の低いNINA(No Income, No Assets:収入資産証明なし)層の顧客に,住宅ローンを融資しても何の問題もないと自分に言い聞かせていた。タイガー・ウッズは,一夫一婦制のルールなど自分には関係ないし,なぜか世界的に有名な選手のお遊びに気づく人はいないと自分を納得させていた。
ロイ・バウマイスター&ジョン・ティアニー 渡会圭子(訳) (2013). WILLPOWER 意志力の科学 インターシフト pp.52-53
(Baumeister, R. F., & Tierney, J. (2011). Willpower: Rediscovering the Greatest Human Strength. London: Penguin Books.)
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