2つ目は感情のコントロールだ。特に気分や機嫌についてコントロールすることを,心理学では「感情制御」と呼ぶ。人はふつう不機嫌な状態や不愉快な考えを避けようとするが,ごくまれに楽しい気分を避ける場合もあるし(葬儀の支度をするときや,悪い知らせを伝えるとき),怒りを維持しようとすることもある(苦情を申し立てるのにふさわしい心理状態でいたいとき)。感情のコントロールには特有の難しさがあるが,それは一般的に,意志力で感情を変えることが難しいためだ。人は自分の考えや行動は変えられても,無理強いされて幸せな気持ちにはなれない。義父母に礼儀正しく接することはできても,彼らの1か月の滞在を喜ぶよう自分に強いることはできない。人は悲しみや怒りの感情を避けるため,他のことを考えて気をそらせたり,ジムで運動したり,瞑想したりという間接的な方法をとる。テレビ番組に夢中になったり,チョコレートを大食いしたり,買い物三昧で気をまぎらわせる。そうでなければ,酒を飲んで酔っぱらう。
ロイ・バウマイスター&ジョン・ティアニー 渡会圭子(訳) (2013). WILLPOWER 意志力の科学 インターシフト pp.53
(Baumeister, R. F., & Tierney, J. (2011). Willpower: Rediscovering the Greatest Human Strength. London: Penguin Books.)
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