ちかごろ行われたある研究で,上司に社員を評価してもらったところ,睡眠をじゅうぶんにとっていない社員はきちんと寝ている社員に比べ,職場で倫理に反する行為をする傾向があることがわかった。たとえば睡眠不足の社員はそうでない社員よりも,他人のした仕事を自分の手柄にすることが多かった。研究室の実験でも,学生を対象に賞金のかかったテストを行なうと,睡眠不足の学生は,チャンスがあれば「ずる」をする傾向があった。睡眠不足は心身にさまざまな悪影響を与えるものだが,そういった種々の影響にかくれて,自己コントロール能力を低下させ,意思決定などのプロセスにも影響を与えるのだ。意志力を最大限に活用するためには,じゅうぶんな睡眠時間を確保することに意志力を使わなければいけない。一晩ぐっすり眠れば,より正しくふるまえるようになる。そのうえ次の日の寝つきもよくなるのだ。
ロイ・バウマイスター&ジョン・ティアニー 渡会圭子(訳) (2013). WILLPOWER 意志力の科学 インターシフト pp.84
(Baumeister, R. F., & Tierney, J. (2011). Willpower: Rediscovering the Greatest Human Strength. London: Penguin Books.)
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