「考慮する条件が山ほどあり,パートナー候補の数も多いと,どうしても完璧を求めるようになります。身長,年齢,宗教をはじめ,他の45の条件を1つでも満たさない相手では,妥協できなくなるのです」。アリエリーは選択肢を捨てることの難しさを,コンピュータゲームを使ってさらに突き詰めていった。そのゲームではドアを開けて部屋の中にある商品を見つけると,本物の現金がもらえる。一番効率がいい戦略は,画面に現れる3つのドアを1つずつ開けて1番豪華な商品を見つけたらその部屋にとどまることだ。しかし何度か繰り返してその戦略を学んでも,新しい特徴が加わると,その戦略に従うのが難しくなる。しばらく部屋の外にいるとドアが小さくなってやがては消えてしまう,つまりドアが二度と開かなくなるという性質が加わったとする。そうするとプレイヤーはひどく気にして,ドアを閉めさせまいと部屋にすぐ戻る。たとえ手に入れた金額が減ってしまうことになってもだ。
ロイ・バウマイスター&ジョン・ティアニー 渡会圭子(訳) (2013). WILLPOWER 意志力の科学 インターシフト pp.135
(Baumeister, R. F., & Tierney, J. (2011). Willpower: Rediscovering the Greatest Human Strength. London: Penguin Books.)
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