この実験によって自己コントロールには2種類の強さがあるという重大な事実が明らかになった。それは「パワー」と「スタミナ」だ。最初の実験では,被験者にまずバネ式のハンドグリップをできるだけ長く握っているよう指示した(これは別の実験で,体力だけでなく意志力を測るにも適していることが示されている)。そして古典的な「シロクマのことを考えるな」テストで精神的エネルギーを消費したあと,再びハンドグリップを握るテストを行なった。2週間後,姿勢に気をつけて生活していた被験者を再び集めて同じ実験を行なったところ,最初のハンドグリップをできるだけ長く握っているテストの成績はそれほど向上していなかった。つまり意志力の筋肉が強化されたわけではなかった。しかし消耗したあとのテストでは成績が向上し,スタミナがはるかに増加していたことが実証された。姿勢を正すエクササイズのおかげで,学生たちの意志力が以前ほど速く消耗することはなく,そのため他の作業もできるスタミナが残っていたのだ。
ロイ・バウマイスター&ジョン・ティアニー 渡会圭子(訳) (2013). WILLPOWER 意志力の科学 インターシフト pp.170-171
(Baumeister, R. F., & Tierney, J. (2011). Willpower: Rediscovering the Greatest Human Strength. London: Penguin Books.)
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