メタ分析によるもう1つの思いがけない発見は,自己コントロールは仕事や勉強には役立つが,食事とダイエットに関してはあまり効果を発揮しないということだ。比較的自己コントロール能力が高い人は,体重もそこそこうまく管理できるが,他の性質に比べると効果はそれほど大きくない(その理由については,あとの章で述べる)。感情の調整(満足を感じる,健全な自尊心を持つ,絶望しないなど)や,親しい友人,恋人,親戚とうまくつきあうことなどにも,自己コントロール能力は適度な恩恵をもたらしてくれる。しかし最も効果を発揮したのは学校や職場である。優秀な学生や労働者が良い習慣を身につけていることは他でも証明されているが,それを裏付ける結果が出た。卒業生代表になるような学生は,大きな試験の前に徹夜で勉強するタイプではなく,学期の最初から最後までこつこつ勉強するタイプだ。長期にわたって着実に仕事をこなす労働者が,長い目で見ると最も成功しやすい。
ロイ・バウマイスター&ジョン・ティアニー 渡会圭子(訳) (2013). WILLPOWER 意志力の科学 インターシフト pp.202
(Baumeister, R. F., & Tierney, J. (2011). Willpower: Rediscovering the Greatest Human Strength. London: Penguin Books.)
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