たとえば大学教授にとっては,終身在職権を得ることが大きなハードルでもあり区切りでもある。ほとんどの大学で,それは独創的で質の高い研究を発表しているかどうかで判断される。ボブ・ボイスという研究者が,まだキャリアの浅い若い教授たちが執筆するときのやり方を調べ,その後,どのようにキャリアを積むかを追跡した。特に上司もいない,他人からスケジュールを強制されない,他人に指示されることがない仕事なので,当然ながら若い教授たちの仕事の進め方はさまざまに違っていた。資料をじゅうぶん集めてから,1日中,あるいは眠る時間を惜しみ,集中して1週間か2週間で一気に論文を書くタイプも入れば,毎日こつこつ1ページか2ページ書き進めていくタイプもいた。その中間のタイプもいた。数年後,その教授たちがどうなったか追跡調査をしたところ,彼らの命運ははっきり分かれていた。1日1ページ派は順調で,だいたい終身在職権を手に入れていた。一方,一気に書き上げる派はそこまで順調ではなく,研究者としてのキャリアを終わらせた人も多かった。この結果から考えると,若い作家や出世を目指す教授たちへは,毎日書くことをお勧めする。自己コントロール能力を発揮して毎日の習慣にしてしまえば,長い目で見たとき,無理をせずに多くの仕事ができるようになる。
ロイ・バウマイスター&ジョン・ティアニー 渡会圭子(訳) (2013). WILLPOWER 意志力の科学 インターシフト pp.202-203
(Baumeister, R. F., & Tierney, J. (2011). Willpower: Rediscovering the Greatest Human Strength. London: Penguin Books.)
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