こうしてお互いを認め合うのは楽しいし,伝統的な勉強法より長期的な利益があるということになっている。カリフォルニア州が自尊心を高めることの効果を評価するよう研究者に依頼したとき,その仮説には大いに期待ができると思えた。報告書をまとめたカリフォルニア州バークリー校の有名な社会学者ニール・スメルサーは,最初のページでこう断言している。「ほとんどとは言わないまでも,社会に蔓延している問題の多くの根は,この社会を構成する人たちの,自尊心の低さにある」
彼らはさらに「今のところ」その確実な科学的証拠が見つからないのは「残念だ」と述べているが,しかしもう一度調査が行なわれれば,もっと良い結果が出るだろうと期待されていたため,自尊心の研究には潤沢な資金が提供された。研究は続けられ,やがて別の機関が調査を依頼した。今度はカリフォルニア州のような政治機関ではなく,科学的な機関である心理科学協会だった。その結果は,ホイットニー・ヒューストンやレディ・ガガのインスピレーションに満ちたパフォーマンスを刺激するようなものではなかった。
ロイ・バウマイスター&ジョン・ティアニー 渡会圭子(訳) (2013). WILLPOWER 意志力の科学 インターシフト pp.240-241
(Baumeister, R. F., & Tierney, J. (2011). Willpower: Rediscovering the Greatest Human Strength. London: Penguin Books.)
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