それまでは着実に事業を継続するのが仕事の本流だったから,業務の検討は何かというと「前例は?」から始まった。いわゆる「前例主義」である。それが政策官庁を自認するならば,前例のない新しいものにも挑まなければならない。裏返せば過去の例に囚われず自由な発想ができるということだ。88年に第1回大会が開かれた全国高等専門学校ロボットコンテスト(高専ロボコン)は,そのはしりと言っていい。ロボコンはNHKテレビの人気番組として定着し,長澤まさみ主演の映画『ロボコン』(03年,古厩智之監督)にもなった。
お堅い高等教育行政からロボコンのアイデアが出たように,従来の枠を超えた新しい取り組みが次々と現れる。文化,スポーツの振興に民間資金を導入した90年創設の芸術文化振興基金,スポーツ振興基金,01年発売開始のサッカーくじ(toto)などが「ヒット商品」に挙げられよう。
寺脇 研 (2013). 文部科学省:「三流官庁」の知られざる素顔 中央公論新社 pp.35
PR