数字についての訓練を新たにはじめたのは2003年の秋だったが,その時点でアレックスは数字の「ワン(1)」から「シックス(6)」まで知っていた。しかし,おぼえた順番は番号順ではなかった。はじめにおぼえたのは,たとえば三角の木材を指す「スリー コーナー ウッド」の「3」と,四角い紙を指す「フォー コーナー ペーパー」の「4」だった。つぎにおぼえたのが「2」,続いて「5」と「6」,そして最後が「1」である。今度の訓練では,アレックスが数字の意味を本当に理解しているのかどうかを確かめることにした。3歳前の人間の子どもに4個のビー玉を見せ,「いくつ?」と聞くと,たいていの場合は正しく「4つ」と答えられる。しかし,ビー玉がたくさん入っている箱を差し出して同じ子どもに「ビー玉を4つ取ってちょうだい」とお願いしても,適当にわしづかみしたたくさんのビー玉を渡されるのがオチだ。言葉もそうだが,「言える」からといって「理解している」とは限らないのだ。
アイリーン・M・ペパーバーグ 佐柳信男(訳) (2010). アレックスと私 幻冬舎 pp.243
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