3年以上でも,6ヵ月以下でもない,とことの始めにいっておく。3年以上でないわけは,仮に3年間研究してもテーマを絞ることができず,必要な資料収集もままならぬとなれば,それは次の3点を意味しうるにすぎないからだ。すなわち,
1)選んだ論題が間違っていて,自分の力を超えたものだった。
2)いつまでも言い足りないという不満が残るような類のもので,その論題の研究には引き続き20年も要するもの。しかし,有能な学生なら,限定(たとえささやかなものにしろ)を設けることができ,この限定内で何か決定的なものを産み出すことができなければならない。
3)論文ノイローゼにかかった場合。それをうっちゃったり,やり直したり,実行不能と悟って,錯乱状態に陥ったり,論文を卑劣な振舞いの逃げ口上に持ち出したりする。これでは,学位取得はとても覚つかないだろう。
ウンベルト・エコ 谷口 勇(訳) (1991). 論文作法—調査・研究・執筆の技術と手順— 而立書房 pp.23
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