筆者が博士論文を作成した当時は,大学院の学位論文としては量的研究が主流であった。その大学院で博士論文として認められるためには,質的研究方法を用いた場合でも,最低限30例の対象者数が必要であると指導を受けた。学位論文はその研究科で認められる必要があるので,筆者は30例のインタビューデータを収集・分析して,海外の学会で発表した。
学会では,「30例の対象者数が本当に必要だったのか?」「理論的飽和との関連はどうだったのか」「30例のデータを分析しきることができたのか」と,対象者数が多すぎるという批判を受けて驚いた。
データ収集には,研究対象者の協力が不可欠である。対象者の貴重な時間を費やしていただくのだ。なぜ,この対象者からデータを得ることが必要なのか,一例一例,その理由をもってデータ収集にあたっているかどうか,研究者自身が問い続けることが必要だろう。
萱間真美 (2013). 質的研究のピットフォール:陥らないために/抜け出るために 医学書院 pp.44-45
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