皮肉な話だが,アメリカ国際開発庁の元副長官,ハリエット・バビットはグローバル化がさらに進展すると予想する別の理由を明らかにしている。「悪徳は美徳よりもはるかにグローバル化が進んでいる」というのだ。
たとえば違法ドラッグの取引は,国連の調査では全世界で4千億ドルになっており,世界貿易の約8パーセントにあたるほどの規模がある。ドラッグ産業は最新の技術を駆使して巨大な地下経済を形成しており,多数の国で公式の経済を上回るほどの規模をもち,世界の端から端までを活動空間にしている。アフガニスタンやコロンビアから,リオ・デ・ジャネイロの学校やスラムまで,神橋やシカゴの街頭まで,ドラッグ密輸は世界有数のグローバル産業になっている。その意志をもつ政府すら,この産業を取り締まることはできない。
性の産業もやはり世界的だ。ルーマニアにあるアルバニア人の難民キャンプでは,若い女性が誘拐され,性の奴隷としてイタリアに送られている。ブカレストでは「人材エージェント」が「ダンサー」をギリシャ,トルコ,イスラエル,さらには遠くの日本の性産業に売っている。国連児童基金(ユニセフ)によれば,毎年何百万人の貧乏な若者が性産業に売られており,その大部分は女性である。
アルビン・トフラー&ハイジ・トフラー (2006). 富の未来 上 講談社 pp.162
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