輸出は日本にとってきわめて重要である。国内に食料とエネルギーの資源が不足しているので,輸入に依存しているからだ。輸入代金を支払うために輸出収入を必要としている。だが,輸出重視が行き過ぎている。その結果,日本は「きわめて効率的な輸出産業ときわめて非効率的な国内産業の混合になって,機能不全に陥っている」と,前述の外交問題評議会の報告書は指摘する。
いまの世界で,これはとくに苦しい状況である。世界が変化したからだ。日本が輸出に頼って「奇跡」を起こしていたとき,韓国,台湾,マレーシアなどのアジア諸国は,世界市場での競争にほとんど参加していなかった。中国は無関係だった。いまでは輸出市場での競争は行き過ぎではないとしても,熾烈になっている。
このため輸出は日本の将来にとっていまでも重要だが,戦略の柱にはなりえない。日本は輸出産業と変わらないほど先進的な国内経済を築いていかなければならない。成功をもたらした戦略に固執しているわけにはいかない。過去は過去なのだから。
アルビン・トフラー&ハイジ・トフラー (2006). 富の未来 下 講談社 pp.236-237
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