心理学では「後知恵」の語にはしばしば「バイアス」の語が伴い,後知恵は「本当にあったこと」を歪める元凶の1つであると見なすのが適切だと広く考えられている。特に有害なのは悪名高い事後主張で,事が終わってから,「そんなことみんなわかっていたよ」と言い出す性癖のことである。後知恵的なバイアスが実際にあること,それは悪質な歴史という結果をもたらす可能性があることに疑いの余地はない。悪質な歴史とは,ある出来事に欺瞞的な意味や重要性を与えるように過去を描くことである。そのため心理学の文献で,後知恵は汚名を被っている。心理学という学問にとどまらず,特に瞑想や「マインドフルネス」やそれに類似した実践では,私たちの多くはどうしても過去や未来にとらわれ,この世界に気を配れないので,現在に,つまり今にもっと注意を向ける必要があるとされる。
マーク・フリーマン 鈴木聡志(訳) (2014). 後知恵:過去を振り返ることの希望と危うさ 新曜社 pp.4
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