意味の曖昧さ自体は,それほど珍しいことではない。たしかに日常言語においても,利用可能な語彙の単位としての単語の意味が,曖昧だったり抽象的だったり広い射程をもったりすることがある。ある対象領域のさまざまな側面を意味することもできるし,境界線がさまざまに移り変わることもある。けれども,わたしがそれを特定のコンテクストのなかで用いて,適用範囲の輪郭を描くやいなや,ことばは意味が明確で具体的で正確になる。それに対して,プラスチック・ワードは,特定のやり方で正確で適切に用いられることがほとんどない。それらはたがいに交換可能な規格部品として使用されるのである。まさにこのために,プラスチック・ワードは,正確さ,具体性,厳密性へと向かういかなる潜在的可能性をも失っているのである。
ウヴェ・ペルクゼン 糟谷啓介(訳) (2007). プラスチック・ワード:歴史を喪失したことばの蔓延 藤原書店 pp.42
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