就職活動をしている大学の後輩に「御社の社風を教えてください」と聞かれたら,あなたは何と答えるだろうか。おそらく多くの人は,「風通しのいい社風」とか「チャレンジングな社風」など,会社の宣伝をするだろう。先輩として自分の会社を誇るのは当然だ。
では,たとえば「風通しのいい社風」というのは何を表すのか。きっと,組織がフラットで上下や左右のコミュニケーションが図りやすい職場環境ということだろう。
確かにその通りだ。だが,本当に言いたいことはそれだけではないような気もする。自分の会社の社風を列挙すれば,普通,4つや5つの言葉はすぐに思いつく。しかし重要なのは,言葉でいくら並べてみても,本人が肌で感じ取っている社風(のようなもの)は伝えられないということだ。会社で仕事をし,その空気に触れれば,一瞬にして身をもって理解される社風は,そもそも言葉では表現できないものなのかもしれない。表に現れる個々の言葉の上位にある抽象化された概念なのではないだろうか。
渡部昭彦 (2014). 日本の人事は社風で決まる:出世と左遷を決める暗黙知の正体 ダイヤモンド社 pp.32-33
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