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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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そういうもの

表面的な仕組みは日系も外資も大きな違いはない。決定的に違うのは,日本の企業がいわば「社長の選抜」をも遠く視野に入れて人事評価を行っている点だ。トップリーダーとなれば,会社の進むべき道を考え,多くの人を引っ張っていけるポテンシャルや素養が重要である。意識・情意・姿勢・見識など数字に表しにくい定性的な評価が必要になる。日本企業の標準的な評価制度において,目標管理にもとづく業績評価に加えて,行動特性やプロセスを見るコンピタンシー評価を重視しているのはこのためだ。
 この結果,どこの会社も似通った人事制度になるが,表面の精密さとは裏腹に,実際の運用は多分に「好き・嫌い」に近い感覚的な評価になりがちだ。たとえば,コンピタンシー評価で考えてみよう。コンピタンシー評価とは,高い業務成績の実現と相関関係が深いと思われる行動特性を何項目かに整理し,対象の社員が各項目についてどのくらい該当するかで評価するというものだ。
 「関係構築力」であれば「積極的に人と関わり,良好な関係を築くことができるか」,「コミュニケーション力」であれば「相手の気持ちを理解し,また自分の意見をわかりやすく伝えることができるか」といった具合だ。この問いに対して5段階で評価しろと言われても,何をもってAなのか,Bなのか,よく判断がつかないというのが誰しも感じるところではないだろうか。言い換えればどの評価をつけてもOKなのだ。となると,お気に入りの部下であれば甘い評価になるのは人情で,逆も真なりである。
 「それでいいのか」と思われるかもしれないが,そういうものなのだ。上司が「好き・嫌い」で評価をしたとしても,その背景には社風が存在し,その暗黙の指示にしたがって同類のDNAを受け継いでいくプロセスと考えられるからだ。
 人事制度は似ていても,実質的な人事評価者は会社ごとに異なる社風であり,いわばその好みで人物を選んでいく以上,会社によって出世タイプが異なるのは当然である。

渡部昭彦 (2014). 日本の人事は社風で決まる:出世と左遷を決める暗黙知の正体 ダイヤモンド社 pp.107-108
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