新卒・一括採用は,採用側にとって効率的なシステムだが,リスクも大きい。すでに述べたように30分×3〜4人の面接で採用を決めるわけだが,そんな短時間で人の能力を見抜くことはそもそも無理だからだ。将来,会社でどのくらい活躍するか読めない対象に短時間で総額数億円の投資をしていることになる。
ところが,面接経験者は実感としてわかるだろうが,相手をきちんと理解するのは無理な一方で,30分間の面接は時間としてはむしろ持て余し気味だ。
「当社を希望した理由は?」
「御社の自由闊達な社風に魅かれました」
「それでは学生時代に注力したことを教えてください」
「レストランでアルバイトをしたことです。人と接する厳しさと喜びを学びました」
無難な受け答えだ。「社内飲み会の『傾斜』を教えてください」などと,人事をギョッとさせることは言わない。体育会系の学生だと,ここぞ,とばかりに「3年間仲間と苦楽をともにし,いっしょに何かをすることの素晴らしさを知りました」と大きな声が響きわたる。つい先日まで遊び呆けていた学生が就活スーツをまとって座っているわけだから,話が深くなっていかないのも仕方がない。
渡部昭彦 (2014). 日本の人事は社風で決まる:出世と左遷を決める暗黙知の正体 ダイヤモンド社 pp.149-150
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