ベンジャミン・フランクリンは恐怖を克服するのに浮力を利用した。「自分を支えてくれる水の力をある程度信用しない限り,いつまでもカナヅチのままだ」と,1760年代末に,泳げない友人に手紙で助言している。どうすればいいか?池や川など,徐々に深くなる場所に胸の深さまで歩いて入り,そこで騎士のほうを向く。次にゆで卵を岸のほうの水に向かって投げ,沈むと,潜ってそれをつかむ。フランクリンは続ける。「君の意思に反して水が君を浮かすことや,思っていたほど簡単には沈まないこと,積極的に力を使わない限り卵に手が届かないことを発見するだろう。こうしてきみは,水にはきみを支えるパワーがあることを感じ,そのパワーに屈することを学ぶ。そういったことを乗り越えて卵をつかもうと奮闘しているあいだに,水中での手足の動きを発見する」。その後で,卵を食べればいい。
リン・シェール 高月園子(訳) (2013). なぜ人は泳ぐのか?水泳をめぐる歴史,現在,未来 太田出版 pp.63-64
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