水泳は体の線をなめらかにし,確実に脂肪を燃焼してくれるけれども,体重減少に直接役に立ちはしない。インディアナ大学運動療法学科の副学長ジョエル・ステイガー博士によると,それは「体重減少は効率,すなわち行った運動量をその運動の代謝コストで割ったものが問題」だからなのだ。「ところが,体重を落とさなければならない大半はあまりに太っていて,効果が出るほど長い距離を泳げない。反対に,上手に泳げる人ほど効率のよい泳ぎをしているので,代謝運動の量は少ない。つまり,もし体重を減らすために泳いでいるとすれば,泳ぎが上達することは,むしろ目的を頓挫させているのです」。浮力のせいですよ,と彼は言う。「浮力がスイミングのエネルギー消費を減らしているのです」。それはジレンマだが,ステイガー博士は気にしない。体重は体型の重要な指標にはならないと指摘する。筋肉は脂肪より重いというのが,その大きな理由である。
リン・シェール 高月園子(訳) (2013). なぜ人は泳ぐのか?水泳をめぐる歴史,現在,未来 太田出版 pp.70-71
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