長身も有利だ。ジョーンズは198センチ。400メートル自由形の世界記録を保持する十代の中国人選手,孫楊は2メートル近くある。アメリカ人の驚異の十代選手ミッシー・フランクリンは185センチ。オリンピックで計6個のメダルを獲得しているライアン・ロクテは189センチ。翼幅が長いのも助けとなる。マイケル・フェルプスが両腕を広げた幅は,身長より7.5センチも長い204センチに達する。翼幅が身長より15センチ長い選手もいる。スイマーの長い四肢の先には特大の手や足がついている。大量の水をすくい上げるフィンサイズの付属物だ(フランクリンの靴のサイズは31センチある)。
彼らの脚は後方にしなり,歩き方をみれば,種目が分かる。自由形の選手には内股が多く,平泳ぎの選手はアヒルのような歩き方をする。彼らの体はやわらかい——とんでもなくやわらかい。フェルプスが足首をほとんど脚にぴったりとつけられるくらい前に曲げられることは有名だ。パーフェクトなヒレ足だ。オリンピック選手ダラ・トーレスの足の指は,手の指さながらに動かすことができる。ほぼ全員が肝心な部分の関節は通常よりずっと可動域が広い「二重関節」になっている。
リン・シェール 高月園子(訳) (2013). なぜ人は泳ぐのか?水泳をめぐる歴史,現在,未来 太田出版 pp.112-113
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