(i) 測定対象全体に適正に数値を対応させる規則(数値表現,ものさし,ruler)の集合の特定.
(ii) そのような規則と規則の間の関係の明確化.
Stevensは,(i)のような「規則(ものさし)の集合」を尺度(scale)と呼んだ.ここで十分な注意が必要なのは,「適正な数値表現を与える規則の集合」が,(i)により,その存在定理が証明され,(ii)により一意性定理が証明されたもとで,「尺度」とよばれるのであって,個々の数値表現を与える規則(ものさし,ruler)は尺度の表現または代表(a representation)となることである.したがって,例えば,キログラム単位系は,それ自体が尺度なのではなく,重さの尺度の「1つの表現(ものさし)」,または重さの尺度を代表しているものなのであって,その背景には,比例定数倍で互いに変換できる他の重さの表現のすべての集合(通常用いられているポンド単位系などに限らず,例えばキログラム単位系に正の比例定数倍で得られるすべての単位系の集合)があると考えるのである.日常では,このような認識は薄いかも知れないが,この点を誤解すると,一見問題のないような測定や統計分析において誤謬やパラドックスを生じることもある.
吉野諒三・千野直仁・山岸侯彦 (2007). 数理心理学 心理表現の理論と実際 培風館 p.60
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