過去30年間に,一般的に世界最速スイマーを決めるレースとされている50メートル自由形のタイムを,男子はほぼ2秒,女子は2秒以上縮めた。水泳の世界では,これはとてつもなく大きい。ちなみに,マーク・スピッツが1972年のオリンピックで金メダルの1つを獲得した100メートルバタフライのタイムは54秒27だった。今日の記録は49秒82である。オリンピック選手(のちに銀幕でターザンが演じた)のジョニー・ワイズミュラーが,1922年に100メートル自由形で1分の壁を破ったとき(同じくアメリカ人のデューク・カハナモクが保持していた世界記録を更新),世界中でトップ記事になった。そのときのタイムは58秒6だった。今日の世界記録は46秒91だ。まだまだ続けられる。そして,タイムを縮める終わりなき競争のなかで,選手たちが将来にわたって続けていくだろう。
リン・シェール 高月園子(訳) (2013). なぜ人は泳ぐのか?水泳をめぐる歴史,現在,未来 太田出版 pp.120-121
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