「スイミングは,いつ呼吸するかに積極的に意識を集中しなくてはならない唯一のスポーツです。そうしないと,うまくいかなくなる」とは,米国水泳連盟でコーチ長を務めるスコット・ベイの言葉だ。
数カ月後に電話で話したときに彼が言っていたが,問題は私たちが「まだほんの子供のときに,息を大きく吸って,止めて,それから水に入るように言われたときに」始まった。わたしたちは一生,それを守り続けがちなのだそうだ。その結果が上達の大きな障害になりかねない。「もし,たったの0.5秒息を止めたら——」とベイは続ける。「たったそれだけの間,息を止めただけで,体の中心部のすべての筋肉,特に横隔膜の筋肉を収縮させてしまう。そして,筋肉は収縮するたびに,いくらかの酸素を燃焼する。したがって,中心部の筋肉が燃料の酸素を燃やし,血液のなかに酸素を注ぎ込む代わりに,そこから酸素を奪ってしまう」。さらに,泳ぐために酸素を必要としている筋肉からも奪う。「息を止めてはいけません。顔が水に浸かっているときに,ゆっくり息を吐き出しなさい。できるだけ普通に。リズミカルに呼吸するよう試みて」
リン・シェール 高月園子(訳) (2013). なぜ人は泳ぐのか?水泳をめぐる歴史,現在,未来 太田出版 pp.133-134
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