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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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PTSDと「死」

 PTSDとは実際は「死」と結びついた疾患である。目の前に「死」の影を垣間見たものだけが,そう診断されるし,この病名を名乗る資格がある。
 次の3つの症状が,PTSDの基本症状と言われている。すなわち「フラッシュバック」「過覚醒」「回避」である。フラッシュバックとは,外傷的な出来事が再び起きているかのように知覚することである。過覚醒においては,覚醒レベルが亢進し,睡眠障害,不安・焦燥感,過度の警戒心などが持続してみられる。回避とは外傷と関連した刺激を避けることである。たとえば,災害が外傷であれば,それに関連するニュースや新聞記事などをできるだけ避けるようになる。
 元来のPTSDは戦争と関連した概念として生まれた。第一次大戦,第二次大戦,そしてベトナム戦争によって,戦争が人間の精神を破壊する場合があることに皆気づいた。それがPTSDである。殺し殺される体験,硝煙や爆裂音,あるいは断末魔の悲鳴の中で見た死体の肉片や血だまりがPTSDを引き起こす。
 アメリカでPTSDの研究が盛んであるのは,つまり当事者としての明確な理由があるのだ。アメリカは常時どこかで戦争を行っているので,PTSD患者も絶えず生じているのである。


岩波 明 (2006). 狂気の偽装 精神科医の臨床報告 新潮社 p.22
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