万引きと収入の関係を調査した数少ない研究では意外な結果が出ている。1960年代のある画期的な論文では,裕福に見える万引き犯は貧しく見える万引き犯より拘留されることが少ないことが示された。<センター・フォー・リテイル・リサーチ>社の社長,ジョシュア・バムフィールドは,統計で示される裕福な万引き犯の数は実際の数より少ないと考えている。「<ハロッズ>では数か月に1回,大富豪の万引き犯が逮捕されていますよ」と彼は言う。
「万引き犯の実像」という論文によると,一般的な万引きの犯人像は「家庭の中心的な買い物担当者」で「通常,収入のある職についていて」,家計の足しにするために盗むとされる。収入と万引きの関係を調査した最新の研究では,年収7万ドルのアメリカ人による万引きは,年収2万ドル以下のアメリカ人より30パーセントも高いことが判明した。収入がいくらか多めの人たちは,収入が少ない人々より,欲望が刺激されやすいようだ。
レイチェル・シュタイア 黒川由美(訳) 万引きの歴史 太田出版 pp.124
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