性行動が動物同士の関係であるように,食は動物と環境の関係だ。食物は体内で地球を代表し,自分の一分となる。思い切って私たちの体を覗き見るか,中を歩きまわって驚異の旅をするなら,一つひとつの細胞が,酸素やさまざまな物質を取り込み,いらないものを排出するのが見られるだろう。消化管の内側を覆っている細胞は,毒物をできるだけ通さないようにしながら,私たちの身体を作りあげている他の細胞の燃料として必要なものだけを吸収する。私たちの細胞は,老廃物を生産する。それが血液によって運ばれ,尿,ウンコ,胆汁,汗,呼気を介して体外に捨てられなければ,自分自身を殺しかねない。ある種の物質は肝臓や腎臓で特殊な処理を経てから排出される。老廃物のなかには,毎日数百億個の単位で自殺している,自分自身の細胞も含まれる。専門的にはアポトーシス,またはプログラム死と呼ばれる営みだ。また別の細胞,特に消化管の内側の細胞は,食物の通過によってこすれ落ち,糞便と共に出てくる。あなたの身体は日々入れ替わっている。便器やおまるの中を覗いてみよう。それはただの便サプルではない。昔の自分だ。それが人生だ。
デイビッド・ウォルトナー=テーブズ 片岡夏実(訳) (2014). 排泄物と文明:フンコロガシから有機農業,香水の発明,パンデミックまで 築地書館 pp.31-32
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