ここで覚えておくべき要点は,どのような命名法や分類法も,たとえ目に見える特徴にもとづくものであっても,結局は人間が利用するために人間が作ったものであり,何にもまして私たちの観察の尺度と視点に左右されるということだ。廃棄物とウンコは動物と植物に関連する分野であって,生態系に関わるものではない。生態系においては栄養循環を分類するほうが重要だ。これは,廃棄物として扱われる時にはウンコと呼ばれるもの,そして生物圏の生命にとって必要だと,ほとんど考えられていないものに取り組むときに重要になる。
ウンコを私たちから切り離されたものとして考えるのと同じように,植物と動物を分けて考えることは,大半の人間の関心が向いている普通の日常生活における実用的レベル,つまり顕微鏡を覗いたり宇宙から見下ろしたりしているのでなければ,まったく有効だ。日常生活では,植物が厳密には動物と同じようにして排泄物を作り出しているわけではないことがわかる。さらに,嫌気性バクテリアであれば茂みからやってくる酸素の臭気に不快になるだろうが,私たちのほとんどは,夜の森のすがすがしい空気の香りを心地よく思うだろう。
デイビッド・ウォルトナー=テーブズ 片岡夏実(訳) (2014). 排泄物と文明:フンコロガシから有機農業,香水の発明,パンデミックまで 築地書館 pp.55-56
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