ヒツジもウシも共に草を食べるが,ヒツジは必要な水分の多くを草から取り,ウシに比べると飲む水の量が非常に少ない。その糞は乾いていて塊にならない。このようにヒツジは水の利用効率がよく,だから砂漠でウシよりも多く見られるわけだ。また,ヒツジは根元近くから草を食べる。放射性物質で汚染された牧草地を除染するために使われた(放射能を帯びた草を食べさせて取り除くことで)のはそのためだ。この採食行動には生態学的にもっと大きな意味もある。オーストラリアは毎年約2万5000トンの羊肉と100万トンを超える生きたヒツジをサウジアラビアに輸出している。このことがオーストラリアの土壌からアラビア半島への栄養分の移動にどう影響するか,疑問が生じるかもしれない。もちろん,ヒツジが水気の多い青々とした牧草地で草を食べることもあり,そうすると生物学者のラルフ・リューインがクワの実状の「チビクソ(シットレット)」と呼ぶものを作り出す。この言葉を私も気に入っており,もっと使う機会を見つけなければならないと思っている。
デイビッド・ウォルトナー=テーブズ 片岡夏実(訳) (2014). 排泄物と文明:フンコロガシから有機農業,香水の発明,パンデミックまで 築地書館 pp.75-76
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