これと正反対の方式が,ポリネシアのトンガなど,中央集権的な政治体制を採る大きな社会に適したトップダウン方式だ。トンガはあまりにも広大すぎて,群島全体はおろか,大きな島々のうちのひとつでさえ,個々の農民が把握することはむずかしい。群島内の遠く離れた場所で何か問題が起こって,それが農民の生活に破滅をもたらしうるとしても,初期段階で農民が知るすべはない。たとえそれを知った場合でも,お決まりの「われ関せず」の姿勢でかたづけてしまう可能性もある。自分にとってはさして重大ではない,あるいはその影響が及ぶのは遠い未来だ,と考えるからだ。また逆に,自分の地域の問題(例えば森林乱伐)が生じても,別の地域に樹木はたくさんあると決め込んで,おざなりな態度をとるかもしれない。実際にどうなのかは知らないままに。
ジャレド・ダイアモンド 楡井浩一(訳) (2005). 文明崩壊:滅亡と存続の命運を分けるもの(下巻) 草思社 pp.14
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