ごみよりもっとひどいのは,進んだ科学技術を中国に伝えて,中国の環境を救おうと努める国々がたくさんある一方で,生産国ではすでに違法となった科学技術を含む高汚染産業(PII)を伝えて環境を損なっている国があることだ。こういう科学技術のうちのいくつかは,中国からさらに開発の遅れた国へと伝わっていく。一例を挙げると,1992年,日本では17年前に禁じられたアブラムシ駆除用殺虫剤フヤマンの製造技術が,福建省の日中合弁会社に売却され,多くの人々を中毒にして死に至らしめただけでなく,深刻な環境汚染を招く結果にもなった。広東省だけを見ても,海外投資家によって輸入されるオゾン層破壊物質フロンの量が,1996年には1800トンに達しており,世界のオゾン層破壊への加担から中国が手を引くことはますます困難になっている。1995年の時点で,中国は推定16998社のPII企業の本拠地となり,合わせて約500億ドルの工業生産高をあげた。
ジャレド・ダイアモンド 楡井浩一(訳) (2005). 文明崩壊:滅亡と存続の命運を分けるもの(下巻) 草思社 pp.145-146
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