実際には,人口の多い国々は不釣り合いなほど貧しい。10カ国中8カ国がひとり当たりGNP8000ドル以下で,5カ国は3000ドルを下回る。裕福な国々は不釣り合いなほど人口が少ない。10カ国中7カ国が人口900万人以下で,2カ国は50万人を下回る。両リストの間の際立った差は,人口増加率にある。裕福な10カ国がごくすべて低い率(年1パーセント以下)を示しているのに対し,人口の多い9カ国(重複しているアメリカを除く)のうち7カ国までが,裕福な国のいちばん高い数字を上回っている。残るふたつの大国のうち,中国では政府の命令で強制的な堕胎が行われ,ロシアでは公衆衛生の破綻で人口がむしろ減りつつある。つまり,経験的な事実としても,人口の多さと増加率の高さは,豊かさではなく,貧困を意味する。
ジャレド・ダイアモンド 楡井浩一(訳) (2005). 文明崩壊:滅亡と存続の命運を分けるもの(下巻) 草思社 pp.347
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