レンネットを使用して羊のミルクをゆっくり凝固させ,非加熱で,海の塩をたっぷりとチーズの表面に擦り込む簡単なチーズ製造技術はこの地でも発展した。出来上がったチーズは酸度も塩分も高く,ペニシリウム・ロックフォルティの生育に適した化学的環境となった。このようなチーズが洞窟の涼しくて湿度の高い環境に置かれて,ペニシリウム・ロックフォルティの生育はさらに高まった。チーズの風味と食感に青カビの成長が与えた影響は望ましいものと評価されるようになり,職人たちは製造方法と熟成の仕方をさらに洗練し,青カビによるチーズ製造を盛んに推し進めていった。
ロックフォールチーズに関する確実な記録で最も早いものは1070年の,1人の貴族が「洞窟」と荘園をコンクのベネディクト修道院に寄進した時のものである。チーズの製造はこの地域ではすでに十分発達しており,修道僧たちは小作の農民たちとともにチーズ作りの技術を向上させるべく働いていた。この地に数多くある修道院が自分たちの「洞窟」をロックフォールに所有するようになり,チーズの生産を修道僧が管理運営するようになって,目に見えて発展した。
ポール・キンステッド 和田佐規子(訳) (2013). チーズと文明 築地書館 pp.215-216
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