経験に対する開放性(知性)は,独創的な考えや情動的知能(EI)が何より大切な職業——コンサルタント,調停員,広告業といった職種——で役に立つことがわかっている。一方,この項目の得点が低い人は,製造や機械関係の仕事で成功する傾向がある。誠実性の得点が(高すぎれば執着,強迫観念,完全主義に陥ってしまうが)中程度以上の人はあらゆる職種で抜きんでる傾向があり,中程度以下の場合はその逆のことが言える。外向的な人は社交性が求められる仕事で成功し,内向的な人はグラフィックデザイナーや会計士など,より「孤独」もしくは「内省的」な職業で成功する。協調性の得点が高い人も,かなり広範囲の職種で成果を上げられるが,とくに能力を発揮できるのは看護や軍隊など,顧客サービスやチームワークが重視される職種だ。ただし誠実性と違って,得点が低くてもかえって都合のいい場合がある。熾烈で非情な業界——エゴが衝突し,リソース(アイディア,特ダネ,受信料や購読料など)をめぐる激しい争奪戦が繰り広げられることも多いメディアなどだ。
最後は神経症的傾向だが,これはNEOの5つの次元のうち,最も不安定かもしれない。とはいえ,情緒が安定していてプレッシャーにさらされても冷静でいられることは,集中力と冷静さがものをいう職業(パイロットや外科医など)では間違いなく重要だ。神経症的傾向と独創性が分かちがたく結びついていることも忘れてはいけない。昔から芸術や文学の傑作のなかには,脳の浅瀬ではなく魂の奥深くにある未知の迷宮から掘り出されたものがある。
ケヴィン・ダットン 小林由香利(訳) (2013). サイコパス 秘められた能力 NHK出版 pp.71-72
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