さまざまな情報が瞬時に行き交うネット時代では,あまりに事象が複雑化していて,一般の人が考えるようなデジタル的「1か,0か」といった考え方や,「白か,黒か」という判断ができない問題が非常に多いのです。
旧来型のマスコミの論理で「良いか悪いか」に集約しようとするようでは,メチャクチャな議論につながるだけです。単純化できない問題はそれこそたくさんありますが,あえて単純化しなくても,最後に「なんとなくわかった」というやり方がケース・スタディそのものと言えます。
もはや,それができないと世界に遅れてしまいます。複雑化した事象をベスト・エフォート的な解決法を見つけて「巧緻より拙速」とばかりに突き進もうとしている世界において,「1か0かはっきりしないと,先へ進めない」などと引っ込み思案でいるようでは,目もあてられないということになるのです。
坂村 健 (2007). 変われる国・日本へ イノベート・ニッポン アスキー p.138
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