サイコパシーが厳密にはどのように犯罪者をより優秀にするのかについては,議論の余地がある。たとえば,サイコパスはプレッシャーのもとでも冷静さを失わない達人で,そのことが逃走用の車や取調室で有利に働く可能性は十分ある。その反面,非情でもあり,目撃者を脅迫して証人として名乗り出ないようにさせる可能性もある。それでも同じくらい可能性があるのは——かつ同じくらいスパイにも詐欺師にもぴったりなのが——非情で怖いもの知らずのうえに,もうひとつ,より高度な心理的才能を備えていることだ。世界トップクラスのポーカープレーヤー顔負けに,もうあとがないというとき,自分の感情を人並み以上にうまくコントロールできる。そうした才能が強みになるのは,法廷の外で不埒な計略や活動を思いめぐらし実行に移す際だけではない。法廷のなかでもものをいう。
ケヴィン・ダットン 小林由香利(訳) (2013). サイコパス 秘められた能力 NHK出版 pp.159-160
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