ニューヨーク市立大学ジョン・ジェイ法科カレッジのダイアナ・ファルケンバックとマリア・ツーカラスは最近,「ヒーロー人口」と名づけた人々——司法や軍や救助など前線ではたらく職業——のなかで,いわゆる「適応性のある」サイコパス的特徴を示すケースを研究している。
これまでにわかったことは,マームートの実験が明らかにしたデータときれいに整合する。ヒーロー人口は社会志向の生活様式を体現している反面,タフでもある。そうした職業につきまとうトラウマやリスクの度合いを考えれば当然かもしれないが,恐怖心の欠如/支配や冷淡さといったサイコパス的人格目録(PPI)の下位尺度(不安をあまり感じない,社会的支配,ストレスに対する免疫など)と関連づけられるサイコパス的特質が,一般人口に比べて優勢になっている。これらの特質が高めになる位置に調整つまみが回してあるのだ。しかしその一方で,犯罪を犯したサイコパスに比べて,自己中心的な衝動性の下位尺度(マキャベリズム,ナルシシズム,気ままで無計画,反社会的行動など)に関連のある特質はあまり見られない。これらの特質のつまみは低めに設定されている。
ケヴィン・ダットン 小林由香利(訳) (2013). サイコパス 秘められた能力 NHK出版 pp.286
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