休息している人の脳の活動状態にも,同じような現象が見られる。静かに座っているときでさえ,楽観的な人と悲観的な人の脳には根本的な差がある。安静にした状態でも,楽観的な人の脳の左半分は右半分よりもかなり活発にはたらいているが,悲観的な人の脳の左半分の活動度は楽観的な人と比べてずっと低いのだ。このように脳の左半分の活動度が低いことは,抑うつ患者に特有の快楽の欠乏感が,神経レベルで現れた現象だといえる。
脳内のこうした不均衡はヒトだけでなく,サルにも同じように認められる。怖がりで心配症のサルは,脳の左半分よりも右半分のほうが活発にはたらいているが,幸福で健康なサルの大脳皮質の左半分はそれにくらべ,ずっと活動度が高い。こうした不均衡が皮質下の領域と皮質上の領域のどちらに起因しているのかは,まだ十分に解明されていない。
はっきりしているのはこの不均衡が,報奨にすすんで接近するかしないかという傾向にかかわっていることだ。また,脳の左側へんぽ偏りが大きい人は,右側への偏りが大きい人に比べ,おしなべて幸福度や楽観度が高いこともあきらかになっている。
エレーヌ・フォックス 森内薫(訳) (2014). 脳科学は人格を変えられるか? 文藝春秋 pp.78
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