ケンタッキー大学のジェイン・ジョゼフ率いる心理学者のチームはある実験で,刺激追求度が高い人と低い人の双方に一連の写真を見せ,その間の脳の活動をスキャンした。非常に刺激的な画像を見せると,刺激追求度が高い被験者の快楽中枢はオーバードライブ状態におちいり,感情を抑制したり統御したりする前頭前野の活動はほぼゼロになった。逆に刺激追求度が低い人は,前頭前野が強く活性化した。このパターンが意味するのはつまり,刺激追求度が高い人は興奮によって大きな当たりを獲得もするが,いっぽうでその興奮を統制するのは不得手だということだ。
報奨に強く反応するこの傾向は多くの利益をもたらすいっぽう,マイナスの面もある。快楽にはそもそも持続性がないため,快楽の追求は制御のきかないスパイラル状態におちいりがちなのだ。悪くすると,リスクを冒したり何かの依存症になったりという方向にも進みかねない。
けれど,制御を保ちさえすれば快楽の経験は,サニーブレインの回路を強める源になる。そして楽観的な心の傾向を育むという,大きなメリットがもたらされる。この心の傾向は,単に喜びや幸福を感じたり,未来を明るく前向きにとらえたりすることだけではない。そこには,利益や意味をもたらす何かを努力してやりとげるという姿勢も含まれている。サニーブレインの回路は,人間が自分にとってプラスになるものごとにつねに焦点をあわせられるよう手助けをしているからだ。
エレーヌ・フォックス 森内薫(訳) (2014). 脳科学は人格を変えられるか? 文藝春秋 pp.81-82
PR