ゲノムワイド関連解析には欠点もある。多くの科学者が指摘するのはこの手法が,できるだけ広い範囲に網を放って何かがかかるか見てみるというような,いわば手当たりしだいのアプローチであることだ。手法そのものは別に悪くはない。何を探そうとしているのか明確な目標がないときには,とりわけそうだ。だが裏を返せばそれば,何を探しているかについて明確な仮説がないという意味だ。そして,明確な仮説をもつことは科学の重大な指針のひとつだ。
さらに大きな問題は,調査の規模が大きいため,被験者それぞれの脳内回路や認知バイアスについて詳しく調べるのが困難なことだ。このアプローチで典型的に用いられるのは,被験者に電話でインタビューをしたり,性格についての質問票に回答してもらったりというやり方だ。これでは,ゲノムワイド関連解析で用いられる評価項目は往々にして,候補遺伝子アプローチに比べて大雑把なものになってしまう。
エレーヌ・フォックス 森内薫(訳) (2014). 脳科学は人格を変えられるか? 文藝春秋 pp.166-167
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