このしくみをあきらかにしたのが,1979年にローレン・アロイとリン・アブラムソンの2人の心理学者が発表した今や古典となった研究だ。実験は次のように行われた。被験者の頭上で白熱電球がランダムに点いたり消えたりしている。被験者は手元のボタンを押すことを許可されているが,じつはこのボタンを押しても電球が点くか消えるかには何の影響も生じない。ところが,被験者の中でどちらかと言えば楽観的な人々は,電球が点いたり消えたりするのを自分がある程度コントロールできていると確信していた。これはいわば,コントロールの幻想だ。いっぽう,どちらかというと悲観的な人々は,自分が状況をいっさいコントロールできていないことをより正確に見定めていた。これは<抑うつリアリズム>と呼ばれる現象だ。アロイとアブラムソンの言葉を借りるのなら,悲観的な人々は「より悲しいが,より賢い」のだ。
エレーヌ・フォックス 森内薫(訳) (2014). 脳科学は人格を変えられるか? 文藝春秋 pp.
PR