こうした研究について議論すると混乱してしまうことがあるが,それは時間の評価には2つの種類があるからだ。1つは予期的——今の時点から1分間を計って評価する方法。そしてもう1つが追想的——過去のある時点からどのくらい時間がたったかを評価するものだ。時間の流れが遅いと感じるときは,1分たったときどのくらい過ぎたか尋ねると,30秒とか40秒とか1分より少ない数字を答える。つまり過小評価する。しかしあとになって,そのときのことを思い出して答えてもらうと,今度は過大評価するのだ。どちらも時間の流れが遅いことを示している。たとえばあなたが,とてつもなく退屈な劇を見ているとしよう。早く休憩時間にならないかと思っているとき,1時間過ぎたと思ったら知らせてほしいと頼まれた。そのようなときは時間がなかなか経過しないので,40分ほど過ぎたところで1時間たったと思ってしまうかもしれない。ようやく休憩時間になり,第1幕を振り返ると,まるで2時間も続いたように感じてしまう。そのため数字だけ見ると,片方は過大評価,もう一方は過小評価のように見えるが,どちらも時間の流れが遅いと感じているという点では同じだ。
クラウディア・ハモンド 度会圭子(訳) (2014). 脳の中の時間旅行:なぜ時間はワープするのか インターシフト pp.52
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