ウェーバーの法則によれば,判断の間違いはその量に比例して増える。つまり数メートル単位で距離を推定するときのほうが,数キロメートル単位で推定するより誤差は少ない。これと同じことが時間にも起こるため,私たちが頭の中で,ある一定の時間を計っているとき,時間を距離としてとらえているという考えを,デンマークの心理学者スティーン・ラーセンが提唱している。地理的な距離を考えているときと同じように,考えている時間が長くなるにつれて,小さな違いには気づきにくくなる。ウェーバーの法則はどんな動物にも,どんなものを評価するときにもあてはまる。だから赤ん坊に厚紙2枚の大きさを比較させるテストを受けさせても,ハトが種をつついて食べるときにくちばしを動かすタイミングを調べても同じだ。これはサイズを計る能力が,時間知覚のカギを握っている可能性があることを示唆している。
クラウディア・ハモンド 度会圭子(訳) (2014). 脳の中の時間旅行:なぜ時間はワープするのか インターシフト pp.68
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