作業記憶に関する数多くの古典的研究によって知られるようになったことだが,3秒という数字は,メモをしたり長期記憶にゆだねたりせずに,何かを記憶しておける時間である。つまり電話番号を聞いた直後なら,何もせずともその番号にすぐかけることができるが,他のことに気を取られたり(携帯電話で一度押し間違えて,最初からやり直そうとするだけでもじゅうぶん),あるいは3秒以上待ったりするだけで,かけるのが難しくなる。まるで脳の中が2,3,秒ごとに更新されていくようだ。
脳の時間計測について重要な問題の1つは,頭の中の時計(1つでも複数でも)が,どのようにして違った時間枠を処理しているのかということだ。脳内の同じパルスが5分も100ミリ秒も計っているのだろうか?それともまったく違う時計が必要なのだろうか?もし違う時間枠を計るのに違う時計が必要なら,その境界はどこにあるのだろうか?ここでまた,3秒という時間が登場する。時間の評価のしかたが変わるはっきりとした境界は,3.2秒から4.6秒のあいだであることが,実験によって実証されている。
クラウディア・ハモンド 度会圭子(訳) (2014). 脳の中の時間旅行:なぜ時間はワープするのか インターシフト pp.70
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